私は待っている。
あの日の出来事を、どこからともなく突然降ってくるあの時。
私は確かにあそこにいた。匂いもしたし音も聞こえた。
味もした。感じて出会う、そして生まれた記憶。
私は待っている。
明日を想像して、あんなことや、こんなことを考えては、すぐに忘れて泡のように消えてはまた出てくる一瞬の明日を。
考えたってそのようにはならないのに、毎日現れる想像の中の未知の記憶。
私は待っている。
筆を握って待っている。 過去と未来の記憶すべてが、ここに降って生まれてくるのを。
積み重なっていく絵を見て
私は忘れていた記憶を思い出すように
本当は今日を待っていた。
記憶と生きる今をただ一瞬感じたくて。
過去と未来が背中合わせになった間の今が、一番儚く一番濃い。
過去も未来も私の今日。
掴んだ今を消えないように記憶する。
2018年8月 近藤亜樹