あの⽇を待つ 明⽇を待つ 今⽇

2018. 9. 8 Sat9. 29 Sat
シュウゴアーツ 六本木

私は待っている。
あの日の出来事を、どこからともなく突然降ってくるあの時。
私は確かにあそこにいた。匂いもしたし音も聞こえた。
味もした。感じて出会う、そして生まれた記憶。

 

私は待っている。
明日を想像して、あんなことや、こんなことを考えては、すぐに忘れて泡のように消えてはまた出てくる一瞬の明日を。
考えたってそのようにはならないのに、毎日現れる想像の中の未知の記憶。

 

私は待っている。
筆を握って待っている。 過去と未来の記憶すべてが、ここに降って生まれてくるのを。
積み重なっていく絵を見て
私は忘れていた記憶を思い出すように
本当は今日を待っていた。
記憶と生きる今をただ一瞬感じたくて。
過去と未来が背中合わせになった間の今が、一番儚く一番濃い。
過去も未来も私の今日。
掴んだ今を消えないように記憶する。

2018年8月 近藤亜樹

展覧会について

2018年夏、連日続く猛暑の最中に近藤亜樹からダンボールいっぱいの紙に描かれた作品が届きました。一枚一枚大切に包装された薄紙を開く度にこの半年間、近藤が個人として経験した様々な悲しみ、喜び、そして未来への希望が満ち溢れていました。

 

いかなる時もこの世界への愛情を見失わない近藤亜樹のアーティストたる所以、現実に立ち向かう不屈の勇気、さらなる前進への決意を讃える気持ちをこめて、シュウゴアーツは急遽今展を開催する運びとなりました。

 

描くことは生きることと言い切れるアーティストがどれほど存在するでしょうか。東日本大震災で多くの悲劇を目の当たりにした時、上京し孤独の中で作家としての在り方に悩み続けた時、大切なものを失った時、近藤は必ず絵筆を持って自分のやり方で立ち上がり続けてきました。その度に我々が予想だに出来ない新しい表現を身につけて。今まで近藤亜樹と出逢った方々、そして作品を通してこれから出逢う方々へこの展覧会をお届け出来ることをとても嬉しく思います。是非ご高覧下さい。

近藤亜樹は2018年2月小豆島にて入籍し新しい命を授かりました。その二週間後、夫の井上憂樹さんが南インドで急逝。3月には実家のある札幌に戻り出産に備えていましたが、8月下旬に元気な男児を出産しました。

ShugoArts

近藤亜樹, 母の顔, 2018, acrylic on paper, 38x27cm

ShugoArts

近藤亜樹, 双子の約束, 2018, acrylic on paper, 27x38cm

ShugoArts

近藤亜樹, 飾る, 2018, acrylic on paper, 38x27cm

ShugoArts

近藤亜樹, 記憶の湖, 2018, acrylic on paper, 38x27cm

ShugoArts

近藤亜樹, 瀬戸の海, 2018, acrylic on paper, 38x27cm

ShugoArts

近藤亜樹, 森の子, 2018, acrylic on paper, 54x38cm

ShugoArts

近藤亜樹, インドの実, 2018, acrylic on paper, 27x38cm

ShugoArts

近藤亜樹, あなたを呼ぶ笛, 2018, acrylic on paper, 27x38cm

展覧会情報

近藤亜樹「あの日を待つ 明日を待つ 今日」
会期

2018年9⽉8 ⽇(⼟) ‒ 9⽉29⽇(⼟)

会場

シュウゴアーツ

開廊時間

火〜土曜 11:00−19:00 (日月祝休廊)

Aki KONDO | ShugoArts
近藤亜樹
Aki KONDO

1987年、北海道生まれ。山形県在住。近藤は力強い色彩と躍動感あふれる筆致であらゆる生命への希望や慈しみを描き続ける。「描くことは生きること」という近藤にとって、制作とは自らが見たい世界を描き出し、描くことで自己を認識するプロセスでもある。その創作はキャンバスやパネルにとどまらず、立体物や壁、天井といった空間全体にも自在に広がる。また、約14,000カットに及ぶ油彩アニメーションと実写を融合させた短編映画『HIKARI』では、脚本・監督・制作を手がけるなど、様々な表現活動で才能を発揮している。

 

主な展覧会に「近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は」水戸芸術館(茨城、2025)、「わたしはあなたに会いたかった」シュウゴアーツ(東京、2023)、国際芸術祭「あいち2022」(愛知、2022)、「星、光る」山形美術館(山形、2021)、作品集刊行記念展「ここにあるしあわせ」シュウゴアーツ/ フィリップス 東京/ 現代芸術振興財団(東京、2021)、「高松市美術館コレクション+ 身体とムービング」高松市美術館(香川、2020)、「心に花を」シュウゴアーツオンラインショー(2020)、「あの日を待つ 明日を待つ 今日」シュウゴアーツ(東京、2018)、「絵画の現在」府中市美術館(東京、2018)、「HIKARI」大和日英基金 大和ジャパンハウス(ロンドン、2016)、「HIKARI」シュウゴアーツ(東京、2015)、「近藤亜樹の生態」実家 JIKKA(東京、2013)、「PHANTOMS OF ASIA: Contemporary Awakens the Past」Asian Art Museum (サンフランシスコ、2012)など。2022年VOCA奨励賞受賞。