ShugoArts

丸山直文

ラスコーと天気

2018.7.7 Sat - 8.10 Fri

丸山直文, Waterfront Scenery (201809), 2018, acrylic on cotton, 90x145.7cm
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開廊時間: ⽕〜⼟曜 午前11 時 - 午後7 時(⽇⽉祝休廊)
オープニングパーティー: 2018 年7 ⽉7 ⽇(⼟) 午後5 時より

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「私が⾒ている⾵景は、私が⾒ているように本当にそこに存在しているのだろうか。」

私が今⾒ているものは、私とその対象との間に存在する湿度、またはその場所の匂い、またはそこで聞こえる⾳を通して、こちらへやって来ます。それは不安定でまるで半透明なゼリー状のようなものです。

私は私の知覚のあり⽅について語っているのではないのです。そうではなく、⽣活の中にある全ての事象について語っているのです。私たちがある対象を認識した時、私たちと対象との間に横たわっているものが、どれだけ私たちの認識に関わっているのか、ということです。それは対象を深く理解するということとは違います。また私たちの⼼の有り様で対象の捉え⽅が変わるということでも無いのです。そうではなく対象と私たちの間には、私たちにも対象にも依存しない、⾃⽴した何かが存在しているのです。

それは常に揺らいでいるので、私たちに不安を与えますが、少しの⾃由とユーモアをもたらします。

丸⼭直⽂

 


 

シュウゴアーツは2018 年7 ⽉7 ⽇(⼟)から8 ⽉10 ⽇(⾦)まで、丸⼭直⽂の新作個展「ラスコーと天気」を開催いたします。

丸⼭は1964 年新潟県⽣まれ。1986 年より東京を拠点に制作を⾏い、1990 年代以降の⽇本の重要なペインターの⼀⼈として第⼀線で活躍を続けています。

いわゆる様式としての「絵画の終わり」ではなく、今⽇の社会における「芸術としての絵画の終わり」に対する危機感を抱いているという丸⼭は、今回の展覧会タイトル「ラスコーと天気」に「描く」という⾏為の総体に対する問題意識を忍ばせています。未だにその⽬的や動機が正確には解明されていないという、ラスコー洞窟内の旧⽯器時代の壁画。そして丸⼭が今回のモノクローム絵画の制作に使⽤したラスコー社の絵の具。「ラスコー」という象徴的な名前を持つ既製品の画材を使うことで不意に思い起こされた、⼆万年前と現在との時間的な隔たりは、なぜ⼈は絵を描くのかという根元的な問いへと繋がっていきます。

本展の開催に先駆けて収録したインタビューの中で、「芸術としての絵画が終わっていくような時代の⾵潮の中で、⼀⼈のペインターとして何をするのか」という問いに対し、丸⼭は以下のように答えています。「絵画の読み⽅、解釈の仕⽅をつくっていかないと、という思いがあります。時代が変われば当然読み⽅も変わってくるだろうから、なぜ⼈が絵を描くのかということがいまだにわからないのであれば、まだ⾊々と引き出しはあるんだろうという気もします。」

丸⼭は下地処理をせず、たっぷりと⽔を引いた綿布に絵の具を滲み込ませる技法によって作品を制作しています。キャンバスに置かれた絵の具は⽔の層によって⾃由に広がり、滲み、境界線をなくし、やがて定着します。

丸⼭にとっての⽔は偶然性を期待してではなく断定を避けるために存在し、⾃由を与えてくれるものでもあれば不⾃由なものでもある両義的なものです。それは主体と客体の間、⾃分とキャンバスとの間に常にあり、天気のように、あるいは時代や情報のように、その時々の環境や雰囲気を作りあげる重要な要素であり、それゆえに⽔を媒介とした滲みやぼかしという技法は、丸⼭のものの⾒⽅や画家としての在り⽅に強く結びついているように思われます。

本展覧会では、ラスコー社のグレーの絵の具を使⽤して描かれた「⽔辺の⾵景」シリーズの新作を中⼼に展⽰いたします。デビューして30 年あまり、常に真摯に絵画と向き合い続ける丸⼭直⽂の野⼼的な試みに溢れる新作展にご注⽬頂ければ幸いです。なお本⼈のインタビュー動画は7⽉初頭に公開予定です。こちらもどうぞご期待ください。

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丸山直文, Waterfront Scenery (201804), 2018, acrylic on cotton, 89.8 x 145.6 cm