ShugoArts

戸谷成雄

視線体

2019.9.21 Sat - 10.19 Sat
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展覧会について

 

「世界はそれ⾃⾝完結しているにもかかわらず、彫刻という余分をつけ⾜すのはなぜか」

学生時代、60年代~80年代にかけての現代彫刻の変遷を体感した戸谷は、彫刻を概念の世界から引き戻し、原形的な感覚の歴史に手がかりを求めました。「何もないところに、確かに在ると感ずる意識こそ人間にものを作らせたのではないか。」「見えなさとしての彫刻を再び見える世界として存在させるにはどうすればよいか。」戸谷の問いかけは近代彫刻をも超え、太古からの根源的な人間の存在認識に関する問題へと奥深い広がりを持ちます。

 


⼾⾕成雄, ⽵藪Ⅱ, 1975

 

見えなさとしての彫刻を見せる装置として戸谷は1975年に《竹藪》というパフォーマンスを行いました。竹藪の中にどの竹にも触れないようにロープを張り、その後も同じようにロープを持って竹藪を歩くという行為によって、視線の通り道と自分が歩いた軌跡を視覚化し、視線と肉体が交差する場所を生み出します。見えない線を見える線に、ネガの空間をポジの空間へ、また見る-見られるの主客を交換させることで、戸谷は無数の視線の集積こそが彫刻を生み出すという彫刻理論を提示しました。その後、斜視線の束によって彫られるという構造を持った代表作「森」など戸谷彫刻の数々が生まれ出たことは周知の通りです。

 


戸谷成雄《森 IX》2008ヴァンジ彫刻庭園美術館での展示風景(2011-12)撮影:山本糾

 

——世界は彫刻を疎外する。

世界は眼差しによって構成され、彫られる。
〈彫る〉ように〈構成〉し、〈構成〉するように〈彫る〉。
〈彫る〉は〈構成〉を露わにし、〈構成〉は〈彫る〉を誘う。
視線を視る視線が〈彫る〉である。
視線が穿つ隙間にものを押し込むことが〈構成〉である。

1981年「第二回ハラ・アニュアル」展によせて(一部抜粋)

 

戸谷成雄の今日までの彫刻作品とその言説は、今展の「視線体」においても一貫性があり、彫刻論としての展開のひとつの現れでもあります。新作を通して視線としてのチェーンソーの一閃一閃の勢いが余って断ち落とした塊とも見受けられる周到に仕組まれた欠落の実体化、「視線体」のアウラを生じせしめるかのような、あるいは見えない遺跡・遺構として存在しているものが現れ出ているかのような「視線体」の群れを視線の触覚によって見る者各々の脳内に視線体彫刻を出現させます。本年72歳となる彫刻家・戸谷成雄の半世紀に及ぶ彫刻観の一端をご高覧頂く機会となります。どうぞご期待ください。

2019年8月 シュウゴアーツ

 



 

インタビュー動画 秩父アトリエにて 2016年10月28日

 

 

 

 

 


展覧会概要

戸谷成雄「視線体」
2019年9月21日(土) ‒ 10月19日(土)
シュウゴアーツ (106-0032 東京都港区六本木 6 丁目 5 番 24 号 complex665 2F)
火〜土曜 午前11時 ‒ 午後7時(日月祝休廊)
オープニングパーティー:2019年9月21日(土) 午後5時から午後7時