千葉正也, 絵画とiPS心筋細胞シート, 2025, oil on canvas, panel, 35.3x43cm
千葉正也, 絵画とiPS心筋細胞シート, 2025, oil on canvas, panel, 35.3x43cm
展覧会について
千葉正也の「絵画と野菜」は、2021年にウィーンのギマレスで予定されていた展覧会──かつて馬小屋だった空間を改装した展示スペースでの計画──を出発点に生まれました。展覧会は実現しなかったものの、その構想がシリーズへと展開されていきました。馬の餌である野菜と絵画を同じ空間に配置するというプランをアトリエで試みた際、千葉は、恣意的に結びつけられた両者のあいだに「野菜が絵画を助け、補っているような独特の関係性」があることに気がついたといいます。
千葉正也, 絵画と野菜 #14(林を抜けた広場), 2025, oil on canvas, panel, vegetable, wood, 35×42.8cm
千葉正也は2010年代中頃まで、実在する二次元のイメージや三次元のオブジェ、テキストなどを複雑に絡めた、多次元的な構成の大画面の絵画を制作してきました。2016-2017年頃より次第に画面は縮小し、背景の情報も整理される方向へと移行していきます。一方で2020年のオペラシティでの個展ではペットの亀の視点で展示が展開されたり、2022年のシュウゴアーツ「横の展覧会」では会場自体を90度回転させたかのような視覚的にも身体的にも違和感をもよおす空間を作るなど、鑑賞者の絵画体験を刷新する試みを続けてきました。
「千葉正也個展」2021、東京オペラシティ アートギャラリー 撮影:武藤滋生
「横の展覧会」2023、ShugoArts 撮影:武藤滋生
それらのインスタレーションはテクノロジーや、視覚的効果の新奇さに主眼を置いたものではありませんでした。千葉正也が一貫して追求してきたのは、絵画という伝統的な形式を起点に、絵画が帯びる「精神性」が空間に拡張し、鑑賞者へ作用する可能性についてです。
思うに私が静物画を描く事にこだわっているのは、それが世界に対して困惑する為のフィールドの様に感じているからであると思います。 世界と仮に名付けられ説明も無く目の前に広がっている事象の連なりを前に、誰にも気を使わずに幾らでも愕然として良い場として絵画を設定しています。―千葉正也―
絵画が表現形式の主流であった時代ははるか昔となり、絵画は孤独な時代に置かれていると言えるかもしれません。千葉は、そんな絵画のための「伴侶」(?)として野菜やオブジェクトを選び、彼らとの関係性を築くことで、閉じた平面空間に新たな出口を設けようと試みているかのようにも見えます。
六本木のシュウゴアーツにて、千葉正也の飽くことのない絵画の冒険的な旅をどうぞご覧下さい。
2025年6月 シュウゴアーツ
「The 11th Asia Pacific Triennial of Contemporary Art」2024-2025、Queensland Art Gallery & Gallery of Modern Art
Copyright Queensland Art Gallery | Gallery of Modern Art, Photo by Chloë Callistemon, QAGOMA
展覧会情報
2025年6月28日(土) − 8月2日(土)
シュウゴアーツ
火〜土曜 11:00−18:00 (日月祝休廊)
2025年6月28日(土) 17:00−19:00
シュウゴアーツ
1980年神奈川県生まれ。東京都在住。千葉の作品は、自作したモチーフを繰り返し用いたり、取り巻く環境や過去の出来事から採取したイメージをキャンバス上に再現したりと、自ら選んだ対象に何度でも立ち返り、能動的に関わるプロセスを経て描かれる。卓越した技術力はモチーフに混在する様々な素材感を描き分け、現実らしく描かれた事物、純粋虚構、リアルの世界が交差する独自の複雑な世界観を作り上げる。千葉芸術は古今東西の絵画芸術の様々な成果に対する誠実な継承と同時に、既存の現代芸術の枠組みを絵画というメディアを駆使して揺さぶる大胆不敵な表現である。
主な展覧会に「The 11th Asia Pacific Triennial of Contemporary Art」Queensland Art Gallery & Gallery of Modern Art(オーストラリア、2024)、「横の展覧会」シュウゴアーツ(東京、2023)、「千葉正也個展」東京オペラシティアートギャラリー(東京、2021)、「アッセンブリッジ名古屋」旧名古屋税関港寮(名古屋、2019)、「αM 2018『絵と、』vol.4 千葉正也」GalleryαM(東京、2018)、「宇宙英雄ペリーローダンと私の生活」Art Center Ongoing(東京、2018)、「MAM コレクション006:物質と境界」森美術館(東京、2017)、「思い出をどうするかについて、ライトボックス風間接照明、八つ裂き光輪、キスしたい気持ち、家族の物語、相模川ストーンバーガー、わすれてメデューサ、50m 先の要素などを用いて」シュウゴアーツ(東京、2017)、「ふぞろいなハーモニー」広島市現代美術館(広島、韓国、台北、2015-2016)、「六本木クロッシング」森美術館(東京、2013)など。