ジェイムス・ジョイスの「ユリシ−ズ」でレオポルド・ブル−ムは、ダブリン市内をいつもぶらついている。
帚で地面や床を掃くと、サッサッと音をたてる。
地面や床はレコード盤であり、帚はレコード針なのだ。
地球は大きなレコードで、
我々は毎日、レコード針である両足で音を引き出しているのである。
2024年9月 藤本由紀夫
ジェイムス・ジョイスの「ユリシ−ズ」でレオポルド・ブル−ムは、ダブリン市内をいつもぶらついている。
帚で地面や床を掃くと、サッサッと音をたてる。
地面や床はレコード盤であり、帚はレコード針なのだ。
地球は大きなレコードで、
我々は毎日、レコード針である両足で音を引き出しているのである。
2024年9月 藤本由紀夫
展覧会について
シュウゴアーツでは2020年のオンラインショーから4年ぶりとなる藤本由紀夫の個展を開催いたします。今展ではギャラリーに800枚の素焼きタイルを敷き詰め、BROOM(TILE)を発表いたします。この作品は観客がタイルの上を自ら歩き、その重みで徐々にタイルが音を立てひび割れていく過程により成立します。私たちの身体はレコード盤に吸い寄せられる針のように、常に重力によって地球の表層に触れ、摩擦や振動によってさまざまな音を生じさせています。タイルの作品は2002年にイギリス西南部にある窯元の街、セント・アイヴィスのギャラリーで発表され、その後西宮市大谷記念美術館、美濃を舞台にした「土から生える」アートプロジェクトなど様々な場所で形を変えて制作されてきました。ご来場の皆様に作品に参加して頂ける貴重な機会となります。
以上三点の図版はすべて、2007年 西宮市大谷記念美術館での展示風景 撮影:高嶋清俊
また今展では藤本が長年制作をつづける「SUGAR」シリーズの新作も発表いたします。SUGARは角砂糖をガラスのチューブに詰め、回転させることによって徐々に砂糖がぶつかり合って崩れ、最後は真っ白な粒状の姿へと変化します。
藤本由紀夫, SUGAR II, 1997
藤本由紀夫は2メートル近い人工耳を通して周囲の環境や空間そのものを聴くための「CHAIR WITH EARS」や、溝のないレコードに貼られたラベルを視覚的に認知することで頭のなかで音楽を再生する「DELETE」など、80年代より私たちの知覚に新しい感覚を引き起こす活動を続けてきました。今展では重力や回転力という目に見えない自然の力によってレディメイドの人工物が別の姿へ変容していく様から、私たちが日常と捉えている事物のあり方に問いかけます。ぜひ会場にて作品をご体験ください。
2024年9月 シュウゴアーツ
展覧会情報
1950年名古屋市生まれ、大阪市在住。大阪芸術大学で電子音楽を学び、エレクトロニクスを利用したパフォーマンス、インスタレーションを行う。80年代半ばに発表したサウンド・オブジェを皮切りに、アーティストとして独自の方向性を展開する。2001年、2007年にベネチア・ビエンナーレへ出品。作品を通じて聴覚や視覚に働きかけ、鑑賞者の認識を揺さぶり、知覚を拡張させる体験を創出し続けている。
主な個展に「BLOOM’S BROOM」シュウゴアーツ(2024)、「キュレトリアル・スタディズ12:泉/Fountain 1917-2017, Case 2: He CHOSE it. キュレーション:藤本由紀夫」京都国立近代美術館(2017)、「The Tower of Time」アイコンギャラリー(バーミンガム、2009)、「+/-」国立国際美術館(大阪、2007)、「関係」和歌山県立近代美術館(2007)、「美術館の遠足 1/10 – 10/10」(1997~2006)など。主なコレクションに 東京都現代美術館(東京)、国⽴国際美術館(⼤阪)、⻄宮市⼤⾕記念美術館(兵庫)、広島市現代美術館(広島)、兵庫県立美術館(兵庫)、原美術館 ARC(群馬)など。