2024. 6. 15 Sat7. 27 Sat
シュウゴアーツ 六本木

髙畠依子, LINE(N), 2024, 油絵具、顔料、色土、キャンバス、パネル, 162x162cm

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髙畠依子, LINE(N), 2024, 油絵具、顔料、色土、キャンバス、パネル, 162x162cm

展覧会について

髙畠の仕事は素材と構造という二つの側面から捉えることができる。
ここ数年、風・水・火・磁力といった自然の力を用いて、油絵具を様々に変容させる制作手法が注目されてきた。そして髙畠作品の場合、素材の変化が絵画構造そのものへ影響を与える。例えば「MARS」シリーズ (2020)は油絵具に砂鉄を混ぜ、キャンバス裏から強力な磁力を動かすことで、絵具が磁力の法則によって引っ張られ、隆起したり、弧を描いたりして絵画を形成した。また「CAVE」シリーズ (2022)ではキャンバスそのものに糸を結んで不均一な形状を作り、それを漆喰に何度も浸すことで鍾乳洞のように凹凸が成長し、洞窟の壁面のような不可思議な表面を出現させた。このように髙畠は素材の物質的な現象を通して、絵画を平面的な捉え方から拡張させ、物理的な空間を持つ存在へと展開してきた。

ShugoArts

髙畠依子のアトリエ風景, 2024

今展では力学を用いた二つの展開をみせる。「CANVAS」シリーズは「CAVE」から継続し、支持体そのものへアプローチしている。髙畠は黄麻を用いて独自にキャンバスを平織りし、その織り目の線に沿って面を形づくっている。また麻に顔料や色土といった素材を混ぜ、円運動の力で球体にする作品など、素材と構造がより強固に結びついた一連の作品を発表する。「LINE(N)」シリーズは糸を撚ったり、巻き取ったりする際に生じる回転や重力の原理を用いて作られている。キャンバスを巻きつけた円柱を天井からひもで吊るし円運動させることで、たった一本の線によって新しい空間を生み出す手法を見出した。

 

このように絵画における独自の方法論を得るために、髙畠はoil on canvas(キャンバスに油絵具)に立ち返り、その可能性の探究に余念がない。そしてまた彼女が定期的に芸術をテーマに旅を計画し、ラスコーなどの洞窟絵画群、ナスカの地上絵など訪れた先で五感を通して感じる世界のダイナミズムは、そのままアーティストとしてのスケールの大きさを感じさせるものであり、活動へ影響を与えるものでもある。髙畠依子新作展にどうぞご期待ください。

2024年5月 シュウゴアーツ

ShugoArts

髙畠依子, CANVAS, 2024, 黄麻、膠、油絵具、パネル, 64×51.5cm

展覧会情報

髙畠依子「LINE(N)」
会期

2024年6月15日(土)‒ 7月27日(土)

会場

シュウゴアーツ

開廊時間

火 — 土曜 11:00−18:00(日、月、祝休廊)

オープニングレセプション
日時

2024年6月15日(土)17:00 – 19:00

会場

シュウゴアーツ

Yoriko TAKABATAKE | ShugoArts
髙畠依子
Yoriko TAKABATAKE

1982年福岡県生まれ、東京都在住。2015年アニ・アルバースの研究のためレジデンスを行う(コネチカット州・ジョセフ&アニ・アルバース財団)。髙畠は素材の物質的な現象を通して、絵画を平面的な捉え方から拡張させ、物理的な構造を持つ存在へと展開してきた。ラスコー洞窟壁画やナスカの地上絵などから世界の大きさを肌で感じつつ、素材との対話の中で生まれてくる作品は、イメージを描くことでは生まれることのない物質的空間を持ち、髙畠の手によって生成された作品である。

 

主な個展に「LINE(N)」シュウゴアーツ(東京、2024)、「CAVE」シュウゴアーツ(東京、2022)、「MARS」Gana Art Nineone(ソウル、2022)、「MARS」シュウゴアーツ(東京、2020)、「VENUS」Gana Art Hannam(ソウル、2019)、「泉」シュウゴアーツ(東京、2018)、「水浴」シュウゴアーツ ウィークエンドギャラリー(東京、2016)、「Project N 58 髙畠依子展」東京オペラシティアートギャラリー(東京、2014)。主なグループ展に「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」アーティゾン美術館(東京、2023)、「FUJI TEXTILE WEEK 2021」富士吉⽥中⼼市街地ほか(⼭梨、2021)、「TRICK-DIMENSION」TOKYO FRONT LINE(東京、2013)、「アートアワードトーキョー丸の内 2013」(東京、2013)、「DANDANS at No Man’s Land」旧フランス大使館(東京、2010)。主なコレクションにアーティゾン美術館。