2024. 1. 13 Sat2. 24 Sat
シュウゴアーツ 六本木

米田知子, 氷晶 VIII, 2023, gelatin silver print, image: 35.4×28.4cm, ed.15

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米田知子, 氷晶 VIII, 2023, gelatin silver print, image: 35.4×28.4cm, ed.15

厳冬の凍てつく夜、時に姿を現し、日が登る早朝にはひっそりと姿を消すーこの氷の結晶は、繊細で、微かな温度の上昇、湿度の変化によって消え去ってしまいます。この自然が描く氷の模様は、予期なく現れる、偶発的ドローイングです。極地方で見られるオーロラも、太陽と大気周縁の影響を受けて予期なく現れ、空を照らします。これら自然現象は荘厳であり、存在し続ける生のエネルギーの本質の象徴であるでしょう。一瞬に美を放つクリスタライズされた生ー我々が今、生きている過酷な世界と相反しながらも自然は我々の周りで息づいています。

2023年12月 米田知子

展覧会について

20世紀の波に翻弄された人物の内奥に迫る「見えるものと見えないもののあいだ」、かつてそこに発生した出来事の痕跡を切り取る「Scene」など、米田知子の作品は常に歴史性や場の記憶と深く結びついている。そしてその制作の根底には人類を含めた生に対する真摯な想いと平和への切なる願いがあるということは思いのほか語られてこなかった。今展は米田が自然界の儚くも雄大な存在にフォーカスを当て、「私たちは皆、制御不能な大きな一体感の中にいる小さな存在」であることを示唆する作品で構成されている。

ShugoArts

米田知子,オーロラ VI, 2013/2023, chromogenic print, image: 19x19cm, ed.25

2013年から23年までに撮影された氷晶シリーズはフィンランドの凍てつく寒さの中で撮影されてきた。これらの小さな氷の結晶は少しの環境の変化で消えてしまうが、繰り返しその姿を地上に現すという自然のサイクルを感じさせる存在でもある。同じくシベリア鉄道旅行中に撮影した「氷晶、シベリア I・II」(1998/2023)、ラップランド(フィンランド)・キルピスヤルヴィ村で撮影されたAuroraシリーズ、17世紀絵画でヴァニタス(虚栄)の象徴として描かれるシャボン玉をモティーフとした作品など約24点が初披露となる。

 

様々な人々の記憶や歴史の痕跡の撮影を続けた米田は常に自然を通した生への眼差しを持ち続けてきた。普段と異なる米田作品の魅力にどうぞご期待ください。

2023年12月 シュウゴアーツ

ShugoArts

米田知子, シャボン玉 I, 2023, gelatin silver print, image: 24x19cm, ed.15

展覧会情報

米田知子「氷晶」
会期

2024年1月13日(土)‒ 2月24日(土)

会場

シュウゴアーツ

開廊時間

火〜土曜 11:00−18:00 (日月祝休廊)

担当

石井美奈子

クロージングレセプション
日時

2024年2月24日(土)17:00 ~ 19:00

会場

シュウゴアーツ

クロージングレセプションにて18時より演奏パフォーマンスを行います。

Micromusic I: 3 Pieces for Music Box (2023)
I. Crystals
II. Bubbles
III. Aurorae

 

作曲:トミ・ライサネン
演奏:ヤンネ舘野

ヘルシンキ出身のトミ・ライサネン(Tomi Räisänen)はシベリウス音楽院で作曲を学び、室内楽から協奏曲まで幅広く手掛ける作曲家として世界各地で活躍をしています。昨年はフィンランドで栄誉あるカイヤ・サーリアホ国際オルガン作曲コンクール協奏曲部門大賞を受賞。この度米田知子の写真をモティーフに「Crystals」「Bubbles」「Aurora」の3つの組曲を作曲しました。これらは一音一音を手作業で穴開けした厚紙を、オルゴールに挟んで手回しする手法で奏でられます。今回は同じくヘルシンキ出身、5歳よりバイオリンを始め、ヘルシンキ音楽院、シカゴ・ルーズベルト大学を経て活躍するバイオリニスト・ヤンネ舘野氏(Janne Tateno)による演奏が実現しました。2008年より日本に拠点を移した舘野氏は全国各地でソリスト、オーケストラ、室内楽奏者、バロックヴァイオリン演奏、アルゼンチンタンゴ演奏、またコンサートのプロデュースを行うなど幅広い活動を展開しています。
写真と音の競演をどうぞお楽しみください。

「この小さな組曲は 30 音符の手動オルゴールのためのものです。 書かれた音符1つ1つに対して、小規模ではあるが自動ピアノの古典的なピアノロールと同様、ボール紙の帯に手作業で穴が開けられています。 絶対的な数学的精度で穴を開けることは不可能なので、ボール紙の帯自体が、書かれたスコアの一種の解釈になります。 機械的なピアノロールとは異なり、これらの楽曲は人によって演奏オルゴールのクランクが回され演奏されます。時々加速したりテンポを落としたりします。 時折テンポを速めたり遅くしたりしながら。こうした手回しオルゴールの演奏は、それぞれのパフォーマンスが多かれ少なかれユニークであることを意味します。個々の楽章のタイトル(I. Crystals、II. Bubbles、III. Aurorae)は、米田知子の作品に直接リンクしています。」

トミ・ライサネン 2024年

作家が在廊いたします。

米田知子

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会場

東京都写真美術館 1 階ホール

参加費

無料

開館時間及び詳細につきましては、各美術館HPよりご確認ください。
Tomoko YONEDA | ShugoArts
米田知子
Tomoko YONEDA

1965年 兵庫県生まれ、ロンドン在住。20世紀のイデオロギーをテーマに、徹底した対象へのリサーチを重ねる米田知子はこれまでに戦争や震災の傷跡が残る日本国内以外にもヨーロッパ、東欧、アジアなど幅広い地域において記憶が強く残る場所に訪れて制作を続ける。写真を通して土地やものに宿る歴史的真実に迫り、詩的な感性をたたえた情景の背後に幾層にも重なる記憶を呼び起こす。

 

主な展覧会に「氷晶」シュウゴアーツ(東京、2024)、「残響―打ち寄せる波」シュウゴアーツ(東京、2022)、「Tomoko Yoneda」マフレ財団(マドリッド、2021)、「アルベール・カミュとの対話」シュウゴアーツ(東京、2019)、第12回上海ビエンナーレ(上海、2018-19)、「アルベール・カミュとの対話」パリ日本文化会館(パリ、2018)、「ふぞろいなハーモニー」広島市現代美術館(広島、2015)/ Kuandu Museum of Fine Arts(台北、2016)、光州ビエンナーレ(光州、2014)、あいちトリエンナーレ(愛知、2013)、「暗なきところで逢えれば」姫路市立美術館(兵庫、2014)/ 東京都写真美術館(東京、2013)、「キエフビエンナーレ」(キエフ、2012);「Japanese House」シュウゴアーツ(東京、2011)、「終わりは始まり」原美術館(東京、2008)、第52回ヴェネチア・ビエンナーレ(ヴェネツィア、2007)、「震災から10年」芦屋市立美術館博物館(兵庫、2005)、「記憶と不確実さの彼方」資生堂ギャラリー(東京、2003)など。