その風景は呼吸ができなかった。
Bは独り言を言っていた。彼はそれを警戒し、止めようとしていた。
しかし彼に話しかけているのは彼自身なのだ。
Bは目の前の美しい風景を表す言葉を探していた。彼はその景色が息絶えそうになっていると感じていた。
彼はゆっくりと息を吐き、次第に弱まる気息を捉えようと再び息を吸い込むのをじっと耐えていた。
彼はある程度心地よく静かな生活の中で、落ち着きを見出すことは難しいと感じている。
彼は人生には何層もの重なりがあるかのように、実際それはそうなのだが、一つ一つ剥がしていくことが好きで、そして未だに平和な孤独に到達できない。結局今も、何かに対して激しい怒りが存在しそれが平静を阻むのだった。
時に傷つきやすい人はよき聞き手となる。風景に耳を傾けている時、Bは動かなかった。ただぼんやりと座っていた。Bはかつてある人に、勇気を持ち、決して何も恐れるべきではないと告げられたことを思い出していた。そう言った本人こそ、自分が何かを恐れていることを知り、受け入れることを恐れいていた。
凝視することは息をし続けるためのよい手段だ。起こりうるあらゆることの前に、まずはひどい出来事について考え続ける。
過去と現在の、そっと突然息をのむような、その音に耳をそばだてる。
2023年10月 リー・キット