映画 HIKARI のためのアーティストステイトメント
私が初めて作った映画作品『HIKARI』は、油絵アニメーションと実写で構成される短編映画です。本作は、今を生きる全ての人に「また会える」というメッセージを込めて書き、天国から届けられた手紙のような内容となっています。
私には、この映画を通して伝えたいことがあります。
この世に生まれてきた全ての生命には、必ず死が訪れるということ。残された人間は、死にゆく大切な生命を想い、自らの命に疑問を抱き、消えてしまいたいと思うことすらあるかも知れません。
しかし”生きてさえいれば”どんな感情をも抱くことができるということ、それは素晴らしいことです。たとえ、大切な生命に死が訪れても、必ずまた会えるということを信じ、残されたものは生きることを諦めてはいけないと思うのです。その強い想いこそが、これから出会う新しい未来の入り口へとつながり、過去と共に今をつくる始まりへと導いてくれるのだと私は信じています。
宇宙で爆発が起こり、海から生命が生まれ、人間が誕生し、男と女になり、現代に至るまで、人の想いとともに命はつながってきました。
そしてこの映画を通して伝えたいことが、もう一つあります。人間には、生まれながらにして死んだ髪の毛という細胞があります。しかし、人間は髪の毛という頭を守るために生えた無数の存在を、一本一本意識することはできません。切り離しても痛みがない細胞が、人間に対して注ぐ無償の愛を描くことで、常にいろんな存在から守られているということを知って欲しかったのです。
生命は一人で生まれ一人で死んでいくからこそ生きている間は愛し合うことに感謝し、何かに寄り添い支え合って生きている。その事実をこの映画を通して少しでもいいから伝えられたらと思います。そして、愛する人を失う悲しみを乗り越え、もう一度その人に出会う日まで、今を生きる全ての生命に、生きることを諦めないで欲しいです。
2015年2月 近藤亜樹