飛べ、こぶた

2017. 7. 21 Fri8. 26 Sat
シュウゴアーツ 六本木

近藤亜樹, 飛び出せ危険, 2017, acrylic, lacquer, collage on panel, 163x147cm

19

近藤亜樹, 飛び出せ危険, 2017, acrylic, lacquer, collage on panel, 163x147cm

筆を握り絵を描くとき、感情のバロメーターがぐっと振り切れる。
身体の中の血が騒ぎ、ほとばしるような鮮烈な体験をキャンバスに刻まずにはいられなくなる。
心のバロメーターが振り切れるとき、勇ましい武士のような気持ちでキャンバスに向かう。
深く深呼吸をして思い切り吐き出すと指先から伝わる熱は色になり形に変わり、
やがて物語が生まれる。
何か頭の中にあるものを考えて描きたいのではない。
空間と記憶を掘り起こしてもう一度鮮烈に蘇る体験に出会いたいのだ。
探るように感情と記憶と今を混ぜ合わせ、私はもう一度キャンバスに記憶する。
私の肉体が滅びても、ここに生まれた作品がもう一つの人格を持ち生き続けるように、
私はアトリエで絵という種を蒔き、水を、光を、風を、熱を、一枚の絵に送りこむのだ。
ここにある絵が誰かの手に渡り、そこで絵は成長する。葉が出て花が咲き、
また新しい種になるだろう。
私にとって一枚の絵は、未来をつくるはじまりの希望の種だ。

2017年5月 近藤亜樹

展覧会について

近藤亜樹は絵画の申し子として札幌に生まれ育ち、東北芸術工科大学大学院の在学中に東日本大震災を経験しました。卒業後は東京に移ってシュウゴアーツで二度の個展を開催する一方で、震災をテーマとした作品を作り続け、2014年には一年間絵画制作を中断。実写と油彩アニメを組み合わせた被災者への鎮魂とも言える映画「HIKARI」(2015) を発表するに至ります。さらに、2016年に三宿のシュウゴアーツ ウィークエンドギャラリーにて開催した個展「Artist」では、その頃までに音楽業界との関わりを通じて得た体験を反映した作品群が好評を博しました。

その近藤が昨年後半に初めて訪ねて魅力を知るようになった小豆島に縁あって移住することになりました。今回の30点余りの新作からなる展覧会は近藤が東京と小豆島を行き来しながら出した、5年にわたる東京でのアーティスト生活に対する答えと言えるかもしれません。

近藤亜樹のシュウゴアーツにおける5度目の個展「飛べ、こぶた」をご高覧頂ければ幸いに存じます。

シュウゴアーツ 佐谷周吾

ShugoArts

飛べ、こぶた 2016, acrylic, emulsion paint, collage on panel, 182x91cm

ShugoArts

HOUSE, 2017, oil on panel, 227×362cm [12775]

ShugoArts

飛び出せ危険, 2017, acrylic, lacquer, collage on panel, 163x147cm [12772]

展覧会情報

近藤亜樹「飛べ、こぶた」
会期

2017年7月21日(金) – 8月26日(土)

会場

シュウゴアーツ

開廊時間

火〜土曜 11:00−18:00 (日月祝休廊)

※夏季休廊 : 8月13日(日)から8月21日(月)まで

オープニングパーティー
日時

2017年7月21日(金) 午後5時より

会場

シュウゴアーツ

Aki KONDO | ShugoArts
近藤亜樹
Aki KONDO

1987年、北海道生まれ。山形県在住。近藤は力強い色彩と躍動感あふれる筆致であらゆる生命への希望や慈しみを描き続ける。「描くことは生きること」という近藤にとって、制作とは自らが見たい世界を描き出し、描くことで自己を認識するプロセスでもある。その創作はキャンバスやパネルにとどまらず、立体物や壁、天井といった空間全体にも自在に広がる。また、約14,000カットに及ぶ油彩アニメーションと実写を融合させた短編映画『HIKARI』では、脚本・監督・制作を手がけるなど、様々な表現活動で才能を発揮している。

 

主な展覧会に「近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は」水戸芸術館(茨城、2025)、「わたしはあなたに会いたかった」シュウゴアーツ(東京、2023)、国際芸術祭「あいち2022」(愛知、2022)、「星、光る」山形美術館(山形、2021)、作品集刊行記念展「ここにあるしあわせ」シュウゴアーツ/ フィリップス 東京/ 現代芸術振興財団(東京、2021)、「高松市美術館コレクション+ 身体とムービング」高松市美術館(香川、2020)、「心に花を」シュウゴアーツオンラインショー(2020)、「あの日を待つ 明日を待つ 今日」シュウゴアーツ(東京、2018)、「絵画の現在」府中市美術館(東京、2018)、「HIKARI」大和日英基金 大和ジャパンハウス(ロンドン、2016)、「HIKARI」シュウゴアーツ(東京、2015)、「近藤亜樹の生態」実家 JIKKA(東京、2013)、「PHANTOMS OF ASIA: Contemporary Awakens the Past」Asian Art Museum (サンフランシスコ、2012)など。2022年VOCA奨励賞受賞。