日本は帝国主義の下、列強諸国と肩を並べ、無数の命を犠牲にし、暴力と戦争へと突き進んでいった時代があった。そして1945年、原子爆弾が投下された世界初の国となり、敗戦を迎えることとなる。
歴史において”戦争”は終焉することなく、繰り返され、暴力の余波は絶え間無く打ち寄せる。私の幼少時代は、イデオロギー、社会・経済体制の異なる東西陣営が対立する冷戦の真っ只中であった。そして、1989年ベルリンの壁崩壊からソ連解体の1991年には、旧衛星諸国の多くは独立を果たす一方、新しい境界線が引かれる次の紛争へと推し進められていく。
欧州では民主化を遂げた国の連帯が広がり、多くの犠牲者を出した20世紀の先の大戦に終止符を打つかのよう、ある種幸福を享受したように感じられていたが、絶え間無く続く紛争、テロリズム、過激派の暴走、次に待ち受ける荒波へ、危機の瀬戸際に立たされていたのであった。ロシアのウクライナ軍事侵攻が激化する中、多大な犠牲者と暴虐を生み出し、ふたたび民主主義が脅かされ、試されている。この荒波に立ち向かい、全ての人々の魂に宿る光を、希望を奮い立たせ、消すことなく生きていくのだ。
2022年 米田知子