自分が映像というメディアに惹かれるのは、自分の人生を一つの表現として、記録としてそこに転写できると考えているからだと思います。
そして、映像=光であり、その光の有無=存在の有無につながっているところも好きです。
フィジカルな物体ではなく、現象としての存在であること。なので、結局、自分は映像作品の制作を通して「存在論」の周辺を動き続けているとも言えます。
こんな自分の映像は恒常的な空間ではなく、仮設的な「小屋」で上映されるのがふさわしいのかもしれません。
2023年5月 山本篤
自分が映像というメディアに惹かれるのは、自分の人生を一つの表現として、記録としてそこに転写できると考えているからだと思います。
そして、映像=光であり、その光の有無=存在の有無につながっているところも好きです。
フィジカルな物体ではなく、現象としての存在であること。なので、結局、自分は映像作品の制作を通して「存在論」の周辺を動き続けているとも言えます。
こんな自分の映像は恒常的な空間ではなく、仮設的な「小屋」で上映されるのがふさわしいのかもしれません。
2023年5月 山本篤
展覧会について
山本篤の作品には虚飾がない。
山本はよく「自分は反応体」だという。環境によって引き起こされる自分の反応、つまり、ある現象として存在する自分自身の思考や感情を、物質的な世界に存在させるためのメディウムとして映像を選んだ。そのため一見ナンセンスに見える山本の作品は、全て本人を通じて感じ取られたあらゆるリアリティの断片なのである。
山本篤, 映像小屋, 2017-2023, UHD
山本は平日、非営利団体に勤めて社会のために仕事をする。帰宅して奥さんや子供達、両親と時間を過ごす。そして週末は一人で、またはアーティストの仲間達と、ときに家族も巻き込んで制作を行う。作り溜めた作品数は291本になった。撮影している時間は「自分の人生が定着する」最高の瞬間なのだという。撮影中は思い通りにならないことも多い。うっかり知らない間に撮れてしまったものもある。それでも映像に映ったものを全て自分ごととして引き受けて作品にしている。日常もアートも人生も山本篤に境界線はない。だからこそ山本作品は地に足がついた芸術で、滑稽も悲哀も含めてとても美しい。
山本篤, The ghost from the city of ghosts, 2019-2023, UHD
「映像小屋」はそんな山本の作品を年に一度、大画面で思いっきり見るための企画である。今回はギャラリーの前室を暗室にし、7本の作品を上映する。またギャラリーの後室は千葉正也のドローイング、小林正人らの作品を展示する予定である。夏の一服にぜひシュウゴアーツへお立ち寄りください。
2023年6月シュウゴアーツ
1980年東京都生まれ。多摩美術大学絵画学科卒業。2003年にベルリンへ渡り、映像制作を始める。2018年には文化庁新進芸術家海外研修でベトナム・フエに滞在。平日は会社員として働き、休日に撮影するスタイルを貫き、300本以上の作品を制作してきた。生きることの意味と無意味さを問う、社会派のフィクションから私的なドキュメンタリー、コント的な実験映像など多彩な作品を発表している。
主な展覧会に「寄る辺ない情念」黄金町バザール2024(2024)、「昨日の神殿」Art Center Ongoing (2024) 、「MY HOME IS NOT YOUR HOME」シュウゴアーツ(2022)、「DOMANI・明日展」国立新美術館(2021)、「MAMスクリーン07」森美術館(2017-18)、「ビデオアートプログラム 世界に開かれた映像という窓 第24回:山本篤」広島市現代美術館など。
1980年神奈川県生まれ。東京都在住。千葉の作品は、自作したモチーフを繰り返し用いたり、取り巻く環境や過去の出来事から採取したイメージをキャンバス上に再現したりと、自ら選んだ対象に何度でも立ち返り、能動的に関わるプロセスを経て描かれる。卓越した技術力はモチーフに混在する様々な素材感を描き分け、現実らしく描かれた事物、純粋虚構、リアルの世界が交差する独自の複雑な世界観を作り上げる。千葉芸術は古今東西の絵画芸術の様々な成果に対する誠実な継承と同時に、既存の現代芸術の枠組みを絵画というメディアを駆使して揺さぶる大胆不敵な表現である。
主な展覧会に「The 11th Asia Pacific Triennial of Contemporary Art」Queensland Art Gallery & Gallery of Modern Art(オーストラリア、2024)、「横の展覧会」シュウゴアーツ(東京、2023)、「千葉正也個展」東京オペラシティアートギャラリー(東京、2021)、「アッセンブリッジ名古屋」旧名古屋税関港寮(名古屋、2019)、「αM 2018『絵と、』vol.4 千葉正也」GalleryαM(東京、2018)、「宇宙英雄ペリーローダンと私の生活」Art Center Ongoing(東京、2018)、「MAM コレクション006:物質と境界」森美術館(東京、2017)、「思い出をどうするかについて、ライトボックス風間接照明、八つ裂き光輪、キスしたい気持ち、家族の物語、相模川ストーンバーガー、わすれてメデューサ、50m 先の要素などを用いて」シュウゴアーツ(東京、2017)、「ふぞろいなハーモニー」広島市現代美術館(広島、韓国、台北、2015-2016)、「六本木クロッシング」森美術館(東京、2013)など。
1957年東京生まれ。1996年サンパウロビエンナーレ日本代表。1997年ヤン・フート氏に招かれ渡欧、以降ベルギー・ゲント市を拠点に各地で現地制作を行う。2006年に帰国、福山市・鞆の浦を拠点に活動。2017–2023年東京藝術大学教授。「存在することで少しも失墜しない絵画」を目指し、カンヴァスの布地を片手で支えながら擦り込むようにして色を載せ、同時に木枠に張りながら絵画を立ち上げていくという独自の手法を編み出した。 その状況でしか生まれ得ない作品形態と独自の明るさをもつ絵画を生み出し続けている。
主な個展に「自由について」シュウゴアーツ(東京、2023)、「この星の家族」シュウゴアーツ(東京、2021)、「画家とモデル」シュウゴアーツ(東京、2019)、「ART TODAY 2012 弁明の絵画と小林正人」セゾン現代美術館(長野、2012)、「この星の絵の具」高梁市成羽美術館(岡山、2009)、「STARRY PAINT」テンスタコンストハーレ(スウェーデン、2004)、「A Son of Painting」S.M.A.K(ゲント、2001)、「小林正人展」宮城県美術館(宮城、2000)など。主な著作に『小林正人 MK』(HeHe、2024)、『この星の絵の具[中]ダーフハース通り52』(アートダイバー、2020)、『この星の絵の具[上]⼀橋⼤学の⽊の下で』(アートダイバー、2018)。主なコレクションに、いわき市立美術館(福島)、ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)、宇都宮美術館(栃木)、S.M.A.K. /ゲント市⽴現代美術館(ゲント)、東京国⽴近代美術館(東京)、東京都現代美術館(東京)、宮城県美術館(宮城)など。